■□■人間行動進化学研究会 第2回研究発表会■□■


人間行動進化学研究会では、12月9日(土)、10日 (日)に第2回研究発表会を開催いたします。 当日は,特別講演と、会員による研究発表、 総会を行います。また10日の午後には、公開シンポジウムを開催いたします。本研究発表会では、学際的な交流を図ることを目指したいと思います。そのため、人間行動進化学に関係する実証研究・理論的考察に限らず、それぞれの専門分野における研究(例えばヒト以外の動物研究)であっても、人間行動進化学に関連を持つと思 われるものを積極的に発表していただいています。 ヒト以外の生物学を専門とする研究者と人間行動研究を専門とする研究者が互いの研究について情報交換をする良い機会です。皆様のご参加をお待ちしております。


◇◇◇人間行動進化学研究会 第2回研究発表会 ◇◇◇ 

日程:2000年 12月 9日(土)、10日(日)  
場所:東京大学・駒場キャンパス・視聴覚ホール  
会費:会員 1000円、非会員2000円(入会費を含む)

スケジュール:

★12月9日
13:00〜14:00: 特別講演1
14:00〜14:20: 休憩&ポスター設置
14:20〜15:20: ポスターセッション
15:20〜16:20: 特別講演2
16:20〜16:40: 休憩&ポスター
16:40〜18:20: 口頭発表1

*12月9日夜には懇親会があります。  
18:30〜20:00  
駒場キャンパス3号館2階209号室  
会費 一般(含:学振特別研究員)3000円 学生1500円

★12月10日
9 : 30〜10:30: 特別講演3
10:30〜10:50: 総会
10:50〜12:10: 口頭発表2
13:00〜16:30: 公開パネルシンポジウム


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12月9日 午後の部(13:00〜18:10)
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■13:00〜14:00 特別講演1(座長:長谷川真理子)

顔の初期知覚過程:表情と視線をめぐって
吉川左紀子(京都大学)

ヒトの顔にはコミュニケーションに役立つ多くの情報が含まれている。とくに表情や 視線・顔向きは他者のその時々の心的状態を伝えるだけでなく、どこに重要な情報が あるか(視線・顔向き)、それはどんな性質のものか(快・不快表情)といった環境 内の事象に関する情報も伝達する信号として機能している。これらを正確に処理する 機構をもつことは、ヒトの生存確率を左右する重要な要因であったと考えられる。こ うした推測を裏付けるように、最近の認知行動実験のデータはヒトがきわめて迅速・ 正確に、他者の顔が発する社会的信号を処理していることを示してきた。本講演では 視線・顔向きに対する定位反応、表情の初期知覚、および視線・顔向きと表情の知覚 における相互作用に関する最近の研究について紹介したい。これらの研究から示唆さ れるのは、ヒトにおける顔・表情の認知機構が、「自己にとっての価値」によって処 理精度が調整される、すぐれた特徴をもっているということである。


□14:00〜14:20 休憩&ポスター設置

■14:20〜15:20 ポスターセッション



☆社会的意思決定 多数決原理の適応基盤  
 藤田政博(北海道大学大学院文学研究科)  
 田村亮(北海道大学文学部)  
 亀田達也(北海道大学大学院文学研究科)

☆多数派同調バイアスの適応基盤
  中西大輔 (北海道大学文学研究科)  
  亀田達也 (北海道大学文学研究科)

☆赤信号、みんなで渡れば・・・?  
  松田いづみ(東京大学教養学部)
  竹川敦(東京大学教養学部)

☆エスノコンセプトとしての「文化」  
  桜井芳生(鹿児島大学法文学部)

☆シミュレーションによるモデリング(仮): 社会心理学におけるシミュレーションの利用(1)  
  高木英至(埼玉大学)
  工藤恵理子(青山学院女子短大)
  神信人(淑徳大学)
  林直保子(関西大学)

☆シミュレーションが拓く可能性(仮): 社会心理学におけるシミュレーションの利用(2)  
  林直保子(関西大学)
  神信人(淑徳大学)
  工藤恵理子(青山学院女子短大)
  高木英至(埼玉大学)

☆動物行動学的見地から見た人間行動の諸観察例
  宮川友博(神奈川県立足柄高校)

☆話者間の距離とジェスチャーにおける空間表現  
  細馬宏通(滋賀県立大学人間文化学部)

☆「視線」って何?:Joint Attentionに関する実験心理学的検討  
  千住 敦(東京大学大学院総合文化研究科)

☆ご冗談でしょう、サロウェイさん:出生順位にまつわるエトセトラ
  小林哲生(東京大学大学院総合文化研究科)
  西真理子(聖心女子大学文学部)
  平川雅子(武蔵野女子大学人間関係学部)
  老沼妙子(武蔵野女子大学人間関係学部)
  長谷川寿一(東京大学大学院総合文化研究科)
  倉島治 (東京大学大学院総合文化研究科)
  大六一志(武蔵野女子大学人間関係学部)

☆青少年・若者の犯罪動向をどう見るか?−凶悪化か未熟化か
  長谷川寿一(東京大学大学院総合文化研究科)


■15:20〜16:20 特別講演2(座長:長谷川寿一)

ゲノムという「こと」と生物という「もの」
斎藤成也(国立遺伝学研究所)

われわれが森羅万象を把握するとき,モノとコトという二つの視点に分けるができる。 コトが論理的に記述できる情報の世界であるのに対して,物質そのものであるモノは その記述が簡単ではない。一方,構造はモノで機能はコトであると考えたくなる。し かし論理的な記述のしやすさを考えると,構造のほうが簡単だ。DNAを考えてみよう。 その構造は二重らせんであり,4種類のヌクレオチドの非周期的結晶だ。そのエッセ ンスはA,C,G,Tという4文字のつらなりで表わすことができる。しかしDNAが載せてい るはずの「遺伝子」の「機能」が漠然としている。ゲノム配列の中に埋まっている遺 伝子の機能を情報のレベルあるいは論理構造で記述しようとすると,著しい困難にで あってしまうのだ。ここに,遺伝子型と表現型をどのようにしてつなげるかという, 遺伝学における大問題が存在する。これに注意を払いつつ,類人猿ゲノム計画 Silverのちゃちな現状と遠大な目的をご紹介する。



□16:20〜16:40 休憩(&ポスター)

■16:40〜18:20 口頭発表1:性差・性淘汰          
         (座長:内田亮子)


☆16:40〜
空間認知能力-脳の性分化&“オプティマル”なテストステロンとは?  
  内田亮子(千葉大学)
  丸山 裕史(三菱総研)  
  Richard G. Bribiescas(Yale大学)
  鎌田倫子(千葉大学)
  KTP(慶応双生児プロジェクト)

☆17:00〜
空間認知能力の性差:ホルモンと文化人類学的視点からの解釈  
  鎌田倫子(千葉大学文学部)

☆17:20〜 ヒトにおける配偶者の好みにみられる性差: 交際相手募集広告の分析から
  小田 亮(名古屋工業大学)

☆17:40〜 性的嫉妬の性差に及ぼす年齢の効果
  富原一哉(鹿児島大学)・川原歩(鹿児島大学)

☆18:00〜 嫉妬、女性のコントロール、殺人
  長谷川真理子(早稲田大学)


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12月10日 午前の部(9:30〜12:10)
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■9:30〜10:30 特別講演3(座長:平石界)

社会的意思決定と適応
亀田達也(北海道大学文学研究科)

社会的意思決定と適応 亀田達也(北海道大学文学研究科) 近年,意思決定研究の中核をなす合理性観が大きく変化している. 1980年代以降,意思決定研究の基調となったのは「論理整合性」と しての合理性(Tversky, Kahneman)だった.しかし,過去5年ほどの 間に「外的環境への適応」としての合理性 (Simon, Gigerenzer, Johnson, Payne)の方向に,研究パラダイムが急速にシフトしつつあ る.こうした新たなパラダイムの展開は今のところ非社会的な場面における個人の意思決定に留まっているが,中・長期的には,進化 ゲーム論との連携を軸に,頻度依存的な社会的意思決定にも当然及 ぶだろう.本講演では,こうした意思決定研究のパラダイムシフト を,私たちのチームがここ2年ほど行ってきた研究を題材に例示す る.具体的には,「人は他者の行動をどのように参照しながら決定 を行うのか」という問いを中心に,適応的な集団意思決定,社会的 学習における同調バイアスの機能などに関する,一連のコンピュー タ・シミュレーションと心理学実験を紹介する.



◆10:30〜10:50 総会

■10:50〜12:10 口頭発表2:挑戦的アプローチ(座長:安藤寿康)



☆10:50〜 進化ゲームは人間行動の何を表現するのか  
  高橋亮(東京大・集団生物)

☆11:10〜 言語の適応度を測定したい人のために  
  野澤元(京都大学大学院人間)

☆11:30〜 適応するほど遺伝率は低い? 4枚カード問題による進化心理学と行動遺伝学の橋渡しの試み  
  平石界(東京大学大学院)
  安藤寿康(慶應義塾大学)
  大野裕(慶応義塾大学)
  長谷川寿一(東京大学大学院)

☆11:50〜 遺伝する行動は何か  安藤寿康(慶應義塾大学)


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12月10日 午後の部(13:00〜16:30)
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■13:00〜16:30 公開パネルシンポジウム  
『人間への生物学的アプローチと社会・倫理』

進化理論に限らず生命科学の立場と道具で人間についての研究を推進することは、過去何度か、大きな悲劇を生んできました。ナチによるユダヤ人の大虐殺はその典型ですが、これらの優生学的運動は過去のものではなく、その一部は現在も脈々と続いています。さらに、昨今の遺伝子配列の解読は、より科学的な根拠に基づいた新たな優生学的運動を可能にする潜在的な威力を秘めています。生物学と優生学を結びつけてはいけないということは生物学者の側からも繰り返し強調されていますが、では具体的な方途として私たちはどうすればいいのかということになると、途方に暮れるばかりです。「遺伝」という概念ひとつをとっても、コンセンサスが得られていないのが現状です。 そこで私たちは、このような悲劇を繰り返さないためにも、また健全な生物学的人間論を発展させるためにも、優生学的動向についてさまざまな分野からの展望と総括をおこなうことが議論の出発点として急務であると考えました。議論と対話の場づくりの第一歩として、優生学に詳しい科学史家や行動遺伝学の現場での研究者などを交え、この公開パネルシンポジウムを行います。お誘い合わせの上ご参加下さい。

パネリスト(五十音順):  
安藤寿康(行動遺伝学、慶應大)
後藤弘子(刑法学、富士短大)
松原洋子(科学史、お茶の水女子大)
和田幹彦(民法学、法政大)ほか。

司会:佐倉統(科学技術論、東京大)

なおこの企画は政治的・宗教的な思想信条とは一切無関係であり、
そのような議論をおこなうものでもありません。
お問い合わせ:佐倉(sakura@iii.u−tokyo.ac.jp)まで


人間行動進化学研究会 第2回研究発表会・実行委員

長谷川真理子
長谷川寿一
佐倉統
安藤寿康
内田亮子
平石界
倉島治
小林 哲生

mailto:hbes-j-request@darwin.c.u-tokyo.ac.jp


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